今すぐ聞きたい保険比較のこと!
損害保険の中には、その対象になる危険が発生する確率が、人間の生死に関する確率ほど安定したものではなく、しばしば大きな変動を示すものが含まれています。
また必要とする経済的保障も、しばしば巨額にのぼります。
すべての企業が損害保険についての知識を十分に有しているというわけではありませんが、企業が損害保険に加入するのは、その企業が危険の存在を認識しているからであり、保険加入の目的は明確です。
したがって、保険加入者として十分な経済力を有する企業は、保険会社と、いわば対等の立場で取引を行うことも可能です。
一般の消費者も理論的には保険会社と対等の立場にありますが、経済力、専門知識などに関して、現実には、消費者の立場は保険会社に比して、絶対的にも相対的にも弱い、といわざるをえません。
こうした状況のもとで、もし生命保険事業と損害保険事業が同じ会社によって経営されれば、契約金額の小さな生命保険加入者たる消費者の犠牲の上に、大口の損害保険加入者たる企業に対する利便が供与される可能性があることを否定し切れません。
こうして日本では、近代的な保険事業が始まった明治期以来、生命保険と損害保険の兼営が法律的に禁止されてきました。
生命保険と損害保険の兼営禁止原則の根底には、消費者保護の思想・施策の萌芽とも呼ぶべきものが見られます。
生命保険という名称は、保険の対象になっているのが人間の生命・生死であるところからきているのに対し、損害保険という名称は、保険給付つまり保険金の支払いが実際に生じた損害の経済的な評価額を基準にして行われるところからきています。
要するに、保険が生命保険と損害保険に分類されているということは、異なる基準に基づいて保険が分類されているということであり、論理的に矛盾していることになります。
そのため、生命保険と損害保険の境界に位置する保険や雨保険の性格を併せ持つ保険などが存在しうることになります。
いわゆる第三分野の保険(医療保険、傷害保険など)がその典型であり、近年、この種の保険が急成長を遂げ、旧来の保険分類の基準に問題を投げかけることになりました。
ところが、現行の保険業法のもとでも「生命保険業」と「損害保険業」の免許を同一の者が受けることはできません。
ただし、その第三条は、「人が疾病にかかったこと」「傷害を受けたこと又は疾病にかかったことを原因とする人の状態」「傷害を受けたことを直接の原因とする人の死亡」などに関し、「一疋の保険金を支払うこと又はこれらによって生ずることのある当該人の損害てん補をすることを約し、保険料を収受する保険」については、生命保険または損害保険と併せて引き受けることができる、と規定しています。
保険を生命保険と損害保険に分類すると、どうしても雨保険の境界に位置する保険や両保険の性格を併せ持つ保険が存在することになります。
「ある保険が生命保険とみなされるのか、損害保険とみなされるのか」は、生命保険業界と損害保険業界にとっては、市場の開拓・拡張をめぐっての死活問題にもつながる、といってよいほどの重大事なのです。
曖昧な位置付けがされている第三分野の保険は、生命保険業界と損害保険業界の利害対立の先鋭化を防止する緩衝装置であると同時に、その市場では、生命保険業界と損害保険業界が激しく競合することにもなっています。
理論的には、損害保険に対しては生命保険ではなく、定額保険が対置されるべきなのです。
あるいは変額保険と定額保険を対置させることも可能です。
ただし、この場合の「変額」の意味するところは、近年慣用的に通用している用語である生命保険の一種としての「変額保険」にいう「変額」の意味するところとは異なります。
定額保険に理論上対置させた場合の変額保険における「変額」が意味するのは、損害額の多少に対応して支払われる保険金の変動です。
これに対し、生命保険の一種としての変額保険における「変額」が意味するのは、保険資金の投資運用成果の変動と、その結果としての保険金の変動です。
視点を変えて、危険が発生する対象を基準にして保険を分類すると、たとえば、人保険に対して物保険・財保険を対置させることもできます。
生命保険、医療保険、傷害保険などは、人保険に、住宅保険、車両保険、船舶保険、機械保険などは、物保険・財保険に包合されることになります。
さまざまな基準を用いて保険を分類していけば、まだまだ多くの分類が可能であり、さまざまな基準を用いて保険を分類することによって、保険の構造と機能が一段と明確になってきます。
日本だけでなく、多くの国々において、保険事業は政府によって多かれ少なかれ規制されています。
その最大の理由の一つとして、しばしば保険事業に公共性がある点が挙げられます。
保険の技術的特性から、保険事業には、多数の経済主体が保険に加入することから派生する社会性・団体性が存在することが、保険の公共性につながる、とされます。
また、しばしば生命保険は、数十年にわたって人間の生死と密接な関わりを持ち続けるだけに、長期にわたるその経営の安全が社会的に要請されることになります。
こうした点も保険の公共性の根拠とされます。
保険金の支払いが偶然の事象の生起によって決定されるということから、保険には射倖性があり、したがって公的な規制を必要とする、とも考えられてきました。
さらに保険会社に蓄積され、投資運用される巨額の保険資金が社会経済に多大な影響を与えることから、保険の公共性が強調されることもあります。
そして、なおいっそう保険の本質的な性格に関わる問題があります。
保険金が給付される際には、通常、保険加入者が経済的危機に直面していることが多く、決定的・破滅的な事態への転落を回避する手段としての保険金に対する保険加入者の期待は大きくなります。
しかも保険加入者は、事前に、将来受給する可能性がある保険金に対応する保険料を負担していますので、どのような場合にも、保険会社は、契約に従って確実に保険金を支払うことができるように、その経営の安全性の確保に努めることが、社会的に要請されます。
その意味において、保険固有の公共性は、主として保険金の支払い(あるいは受け取り)に関わる特異なものといえます。
今日では、人口の少子高齢化、産業構造の激変、金融の自由化、技術革新の進展、経営危険のグローバル化、雇用関係の複雑化、情報のネットワーク化、国民の高学歴化、消費者ニーズの多様化、生活不安の深刻化、国際交流の活発化、自然災害の多発化、などを背景にして、保険産業に対する規制緩和が盛んに論じられるようになってきました。
そこでも、保険事業の有する公共性に関する論及が多く見られます。
たとえば、およそ半世紀ぶりになる一九九五年に全部改正された保険業法の、第一条には次のような目的が掲げられています。
「この法律は、保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
」公共性という概念は抽象度が高く、具体性に欠けることが多いことから、しばしば保険の公共性、保険加入者の利益の保護の名のもとに、実際は保険会社の利益の確保・増進が図られているのではないか、と考えられるような事態が、これまで何度も観察されてきました。
保険をめぐる新しい公共性概念の確立が求められるところです。
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